米国政府は2021年6月25日の報告書で、軍のパイロットが目撃した数十個の未確認飛行物体について、説明がつかないと発表した。
未確認飛行物体が、地球外のものである可能性を排除しなかった。
この報告書は、1940年代からの未確認飛行物体の観測結果を、軍が数十年に渡って否定してきたことを覆す米国政府の転換点となった。
既知の航空技術を超える速度と操縦性、推進力や飛行制御面
2021年6月25日に、米政府は予定通りUFOに関する報告書を発表した。
米国家情報長官室(ODNI)が公表した9ページの報告書によると、2004~2021年に米政府の職員や情報源によるUFO目撃情報144件のうち、研究者が説明できたのは1件のみだった。情報の多くは、軍事訓練中に目撃されたものだという。
UAPと呼ばれる「未確認空中現象(UAP=Unidentified Aerial Phenomeno)」の144件の報告のほとんどは、米海軍が標準化された報告メカニズムを導入した後のこの2年間に行われたものだという。
これは、国家情報長官室が、米国防総省が昨年8月に設置した海軍主導の「未確認空中現象タスクフォース(UAPTF=Unidentified Aerial Phenomena Task Force)」と協力して作成したものだ。
このタスクフォースの任務は、これらの事象を「検知、分析、カタログ化」することと、UFOの「性質と起源」について「洞察を得る」ことであるとペンタゴンは述べている。
報告書では、「UAPは明らかに飛行安全上の問題であり、米国の国家安全保障上の課題である可能性がある」とした上で、「説明ができない現象である」と述べている。
報告書には、米国防総省が海軍飛行士によるビデオを公開した際に明らかになったUAPの事例も含まれている。
また、米国の東海岸と西海岸の沖合で、既知の航空技術を超える速度と操縦性、推進力や飛行制御面などを持つ謎の航空機が撮影されていた。
強風の中、高高度で静止したり、推進手段不明の飛行物体
報告書によると、リストアップされた目撃例のうち1件は、「空気が抜けつつある大きな気球」だったとしたが、それ以外の143件についてはすべてが説明不能で、さらなる分析が必要であるとした。
143件については、「おそらく単一の説明を欠いている」と報告書は述べている。
中国やロシアのような他国の技術である可能性もあれば、レーダーシステムに登録される可能性のある氷の結晶のような自然の大気現象である可能性もあるとの指摘。
いくつかについては「米国の団体による開発や機密プログラムに起因する」可能性も示唆している。
また、UFO目撃情報のうち18件は、複数の角度から観察された情報も含め、強風の中、高高度で静止したり、推進手段不明の飛行物体が極端な高速で移動したりと、目撃者を驚かせる異常な動きや飛行特性を示していた。
いくつかの観測では、UAPが「異常なパターンや飛行特性」を示しているように見えたが、それらはセンサーの不具合や目撃者の誤認に起因する可能性があり、「さらに厳密な分析が必要である」と報告書は述べている。
米政府高官は匿名を条件に記者団に、「地球外起源の可能性を否定していない」と語った。
米軍機とUAPとのニアミス、米軍演習を妨害した物体
この調査では、パイロットから報告された11件のUAPニアミスと、軍用機が 「UAP目撃に関連する高周波エネルギーを処理した」少数のケースが記録されている。
また、訓練や他の米軍演習を妨害した物体についても記述されているという。
報告書によると、複数のセンサーによる検出を含む80件の報告があり、そのほとんどが過去数年のものだという。
報告書では、説明可能な次の5つのカテゴリーを設定した。
- 空中クラッタ
- 自然の大気現象
- 米国政府または米国企業の開発プログラム
- 外国の敵対的システム
- その他
この高官は、今回の調査結果は、UAPが外国の情報収集プログラムの1部であるとか、潜在的な敵国による重大な技術的進歩であるという「明確な兆候」を示すものではないと述べている。
目撃された物体の一部が地球外生命体である可能性については言及されていないが、排除もしていない。
公開された報告書は9ページだが、より詳細な報告書が機密情報として議会の軍事委員会と情報委員会に提供される。
上院情報特別委員会(Select Committee on Intelligence)のマーク・ウォーナー(Mark Warner)委員長は、UFO目撃報告の頻度が2018年以降「増加しているようだ」と述べた。
海軍省内でUFOの情報収集を行う特別組織「未確認航空現象タスクフォース」(UAPTF)は、革新的な技術が使われているかどうかを見極めるため、分析を続けるとしている。
今回の報告書作成に尽力したマルコ・ルビオ上院議員
マルコ・ルビオ上院議員は、この報告書の作成に尽力した。
この報告書は、半年前に米国議会で広範な情報関連法案の一部として命じられたものだ。
ルビオ上院議員は、
「私たちが国を守るために信頼している人々が、優れた能力を持つUFOとの遭遇を何年にもわたって報告してきましたが、彼らの懸念はしばしば無視され、嘲笑されてきました」
と述べている。
「この報告書は、これらの出来事を記録するための重要な第一歩ですが、これは単なる第一歩に過ぎません」
と述べている。
報告書の発表後、米国防総省は、現在タスクフォースが担当しているUAP調査任務を「公式化」する計画を発表した。
以前にもあったUFOに関する公式報告書
UFOに関する米国の公式報告書はこれが初めてではない。
米空軍は、1969年に終了した「プロジェクト・ブルーブック」と呼ばれる過去の調査を行い、1万2,618件の目撃情報をリストアップしたが、そのうち701件は公式には “未確認 “のままだった。
空軍は1994年に、1947年にニューメキシコ州で起きた「ロズウェル事件」に関する記録を探す調査を完了したと発表した。
それによると、ロズウェル付近で回収された物質は、軍の長年の説明である気球の墜落と一致しており、宇宙人の遺体や地球外物質の回収を示す記録はなかったという。
米空軍パイロットの証言
米軍元パイロットが今だから明かす「UFO遭遇の瞬間」(字幕・25日) https://t.co/ZOgD9ORHZi
— 暮學 (@kurashigaku) June 28, 2021
米国防総省は、2020年4月にUAPの動画を公開した。
それによると、それらは米海軍によって撮影されたものだという。
先月放送されたCBSニュースの「60ミニッツ」では、2人の元海軍パイロットが、太平洋上で自分たちの動きを映し出すような物体を見たと話している。
1人のパイロットは、その白い楕円形のミント菓子のような形という意味で、「小さな白いTic-Tac(チックタック)のようなもの」と表現した。
目撃者で元海軍パイロットのアレックス・ディートリッヒ氏は、BBCニュースに次のように語っている。
「その物体は、非常に高速で不規則な動きをしており、どちらに曲がるのか、どのように操縦しているのか、推進システムはどうなっているのか、予測できませんでした」
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