[小説レビュー]京極夏彦/西巷説百物語 数えずの井戸 百器徒然袋 風 前巷説百物語

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京極 夏彦(きょうごく なつひこ)

1963年3月26日生まれ。
日本の小説家、妖怪研究家、アートディレクター。世界妖怪協会・世界妖怪会議評議員(肝煎)、関東水木会会員、東アジア恠異学会会員。「怪談之怪」発起人の一人。北海道小樽市出身。北海道倶知安高等学校卒業、専修学校桑沢デザイン研究所中退。代表作に『百鬼夜行シリーズ』、『巷説百物語シリーズ』など。株式会社大沢オフィス所属。公式サイト「大極宮」も参照。(Wikipediaより)

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西巷説百物語

ファン待望のシリーズ第5弾。『巷説百物語 (角川文庫) 』、『続巷説百物語 (角川文庫)』、『前巷説百物語 (角川文庫)』に続いて、 今度は「西」で西巷説百物語 (角川文庫)

御行の又市を主人公とした江戸から舞台を大阪に移し、靄船の林蔵が中心となって活躍する。

口が上手く、言葉巧みに罠を仕掛ける林蔵の技。

たいして身体を動かすことなく、言葉で術に絡めてしまう。

「桂男」では、月を眺める大店の主人、剛右衛門に、月を眺めてはいけないと帳屋の林蔵が言う。

月にはウサギではなく、巨大な桂の木を切る桂男がいるという。

満足している、幸福だという剛右衛門の娘、お峰に、船問屋の次男坊との縁談が持ち上がった。

しかし、その縁談は…。 二転三転する物語。京極節が炸裂する。文句なく面白い。

数えずの井戸

嗤う伊右衛門 (中公文庫)』 『覘き小平次 (中公文庫)』に続く、怪談シリーズ第3弾。

今回は、ご存じ、番町皿屋敷がテーマだがなるほど、京極夏彦の手にかかると、全く新しい世界が広がってくる。

とびきりの器量よしなのに、そのことにも気付かぬ、ぼんやりとした娘、菊。有能だった父の跡を若くして継いだ旗本、青山播磨。遊び仲間だが、家の跡を取れずに怠惰に過ごす、ごくつぶしの遠山主膳。

環境に恵まれて楽しく生きている旗本の娘、吉羅。 菊が青山家に奉公へ上がり、播磨と吉羅の間で縁談がまとまって、物語は意外なほうへ…。

播磨も主膳も、満たされない思いを抱えている。詰まり、「足りない」。無いものを数えても仕方がない。

数えるから足りなくなる。 独特の文体にどっぷりはまって、抜けられない。

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百器徒然袋 風

眉目秀麗にして腕力最強。上流にして高学歴。破天荒にして非常識。

豪放磊落にして天衣無縫。他人を見たら下僕と思い、調査も捜査も推理もしない。

京極堂・中禅寺秋彦をも閉口させる史上最強の薔薇十字探偵・榎木津礼二郎が大活躍。

「下僕」たちを翻弄しつつ、力技で事件を解決する。

「五徳猫」「雲外鏡」「面霊氣」の3編を収録した中編集だが、『百器徒然袋│雨』の続編でもある。

妖怪たちをモチーフに、京極夏彦の筆が冴える。

「五徳猫」では、招き猫の由来なども楽しい。

ちなみに、招き猫には左手を挙げているものと右手を挙げているものがあり、福を招くのは右手だそうだ。

前巷説百物語

2004年、京極夏彦が今更のように第130回直木賞を受賞したのは、巷説百物語シリーズ第三弾の『後巷説百物語 (角川文庫)』だった。

シリーズ最新作の本書前巷説百物語 (角川文庫)は、「御行の又市」がまだ若く、「双六売りの又市」だった頃を描いている。

若い又市は青臭くて甘いけれど、その分、初々しい。

軽妙な語り口で、テンポ良く、ぐいぐい引き込まれる。

特に後半、又市が様々な経験を積み、ついには「御行の又市」になっていく過程は、一人の青年の成長譚としても面白い。

前3作を読んでいなくとも十分楽しめるが、読んでいればもっと楽しい。シリーズ全部読みたくなる。

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