1970年5月24日生まれ。
日本の小説家。沖縄県出身[1]で、那覇市に生まれ、3歳より中学卒業まで石垣島で育つ。本名は又吉真也。血液型はO型。沖縄県立開邦高等学校卒業、早稲田大学人間科学部人間健康科学科催眠専攻中退。1994年、早稲田大学在学中に『バガージマヌパナス』で第6回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し活動開始。1998年、『風車祭(カジマヤー)』が直木賞候補となる。『レキオス』・『シャングリ・ラ』のようなSFファンタジーも執筆する。2017年、『ヒストリア』で第8回山田風太郎賞受賞。(Wikipediaより)
テンペスト
とにかく、面白かった。著者が自ら「ジェットコースター」というように、早いテンポで次々と物語が展開、その度に美しきヒロインが窮地に立たされる。続きが気になって、夜眠れなくなるほどだ。
舞台は19世紀の琉球王朝。頭脳明晰な少女・真鶴は、もっと学問を究めたいと望んでいたが、女であるために叶わなかった。
ところが、学問の才能がない兄が失踪したために、真鶴は宦官と偽って孫寧温と名乗り、超難関の科試に合格して、王宮勤めの高級官僚となる。
13歳という最年少で官僚となった寧温は、首里城内に渦巻く嫉妬と陰謀にさいなまれながらも、そのずば抜けた頭脳で大活躍をする。だが、王の姉でもある巫女、聞得大君と敵対し、怪しげな清国の宦官に正体を見破られるなど、幾度となく窮地に立たされ、ついには島流しに。しかし、再び王宮に戻って、今度は王の側室となり、寧温との二役を演じるはめに…。まさに、はらはら、どきどきのジェットコースターだ。
本当に愛している男はいても、許されない恋。登場人物たちの切なさ、やるせなさが、沖縄独特の短詩形歌謡「琉歌」で謳われている。
それはないでしょうという突っ込み所も満載だが、それもこの際もうどうでも良い感じ。時にはコミカルに、時には悲しく、読者をぐいぐいと引っ張ってゆく。
早大在学中に沖縄のユタを題材にした『バガージマヌパナス』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞してデビューした著者。十数年でなんともすごい作家になったものだ。直木賞候補にもなったけれど、受賞していないのが不思議なほど。
統ばる島
『テンペスト』の池上永一が、沖縄の八つの島、竹富島、波照間島、小浜島、新城島、西表島、黒島、与那国島、石垣島と、八重山諸島を舞台に描いた短編集。
芸能の島として有名な竹富島(タキドゥン)では、祭の時期になると、神に捧げる踊りや狂言の練習が優先される。
神のお告げにより、祭の主役に抜擢された少年と少女。波照間島(パティローマ)のパイパティローマの伝説。
そこは桃源郷のような所だろうか? 少女はパイパティローマを目指す。
それぞれ独立した物語だけれど、ばる(集まって一つになる)島のように、八つの物語も一つの大きな物語へと収斂していく。著者自身も石垣島出身。 沖縄を描かせたら、右に出る者がない。
トロイメライ 唄う都は雨のち晴れ
仲間由紀恵主演で舞台、ドラマ化されたベストセラー『テンペスト』と同時代の外伝で、『トロイメライ』のスピンアウト集。
テンペストの登場人物たちが顔を出すだけでなく、主人公の武太やジュリ(遊女)の魔加那、料理屋「をなり宿」の女将と部分美人の三姉妹など、個性溢れるオリジナルのキャラクターたちが活躍する。
幕末時代の琉球王朝。
那覇で暮らす新米の筑佐事(岡っ引き)の武太は、今日も町中を走り回っている。水不足の村の窮状、盗みを働いた貴婦人、謎の風水師の秘密など…。
人情に厚い武太は、真相を暴いても、いつも法と正義の間で揺れてしまう。それは筑佐事としては不適格なのか?
つらい時代を唄と涙で生きる庶民たちの、面白くも切ない人生に、ほろりと来る。
トロイメライ
ベストセラー『テンペスト』から2年。
同じ19世紀の琉球王朝時代に、舞台を首里城から那覇に移して、新たな物語が誕生した。
全く別の話だけれど、一話に一人 『テンペスト』の登場人物が出てくる演出が心憎い。
主人公は新米(岡っ引き)の名手で、手作りのおんぼろ三線を名器のごとく弾きこなす。
武太は涅槃院住職・長老の計らいで筑佐事になったのだが、初仕事で捕らえたの事情を知り、法と正義の狭間で揺れるのだった…。
琉球舞踊や琉球民謡、ものすごく美味しそうな琉球料理も物語に華を添える。
気位の高い美貌のジュリ(遊女)、弱きを助け強きをくじく、謎の義賊・黒マンサージ(手巾)など、魅力的な登場人物に心奪われる。