福岡在住のカナダ人美人YouTuberのミカエラさん。
彼女はチャンネル登録数298,000を超える人気YouTuberだ。
日本好きが高じて来日し、福岡を拠点に外国の目を通した日本を紹介している。
今日、彼女のことをふと思い出し、一時期派よく視聴していたユーチューブのチャンネルにアクセスした。
過去の動画に遡って再生していたら、
「Afternoonの昼下がり」というシリーズがあって、
ミカエラさんは「Afternoon in the afternoon」と英訳していた。
まあ、それしか訳しようがないからね。
午後の昼下がり、昼下がりの午後
今回はミカエラ さんの紹介がメインではなく、注目するのは「昼下がり」という言葉。
「Afternoonの昼下がり」の元の言葉である「午後の昼下がり」。
「昼下がりの午後」とも使われる。
これは、昼下がりを強調するか、午後を強調するかの違いだろう。
何となく使ったり、時々目にしたりする言葉だが、よく考えてみると不思議というか、おかしな言葉だ。
私たちがこれをおかしな言葉だと感じるのは、「昼下がり」という言葉の語源を知らないからだとおもう。
日本語には歴史を遡らないと語源が分からない言葉が多く、この言葉もそうなのだ。
「昼下がり」の意味を知るためには、江戸時代まで遡る必要がある。
江戸時代の「時」の概念
江戸の人々の時間の概念は、現代の私たちのそれとは異なっていた。
彼らは、
日出前約36分の薄明るくなった時を明六ツ(あけむつ)、
日没後約36分の黄昏(たそがれ)時を暮六ツ(くれむつ)とした。
この明六ツから暮六ツまでの昼の時間と、
暮六ツから明六ツまでの夜の時間を
それぞれ6等分して一刻(いっとき)とした。
正午頃と午前零時頃の「九つ」からほぼ2時間毎に「いっとき」ずつ減らして、十時頃の「四つ」となる。
その次はまた九つになる。
これは1日を次のように12区分するため、十二時辰と呼ばれる。
正刻の鐘 | 十二支 |
---|---|
夜九ツ | 子 |
夜八ツ | 丑 |
暁七ツ | 寅 |
明六ツ | 卯 |
朝五ツ | 辰 |
昼四ツ | 巳 |
昼九ツ | 午(正午) |
昼八ツ | 未 |
夕七ツ | 酉 |
暮六ツ | 申 |
宵五ツ | 戌 |
夜四ツ | 亥 |
一刻の長さが変わる不定時法
一刻は2時間前後となる。
冬は昼が短く夜が長いので、昼の一刻は夜の一刻よりも短い。
逆に、夏は昼の長さが長く、夜の長さが短いので、昼の一刻は夜の一刻より長い。
現在東京の夏至と冬至の日出と日没の時刻と昼の長さは、次の表のごとくである。
東京の夏至と冬至
夏至 | 日の出 4:26 日没 19:00 | 昼14時間34分 | ||
冬至 | 日の出 6:47 日没 16:32 | 昼 9時間45 |
夏至における昼間の一刻は、約158分。
冬至における昼間の一刻は、約110分。
このように一刻の長さが変化するので、不定時法と呼ばれる。
ただ昼と夜の境を毎日変更するのは大変過ぎるので、二十四節気ごと、つまり15日に一度くらい、明六ツと暮六ツの時刻を変えていた。
こうした不定時法に対応出来るように、重(おも)りや文字盤に工夫がなされた「和時計」に基づいて、江戸の人々には太鼓や鐘を打つ数で時が知らされたのだ。
昼下がりは何時頃?
昼下がりの話に戻ろう。
もうすでにお分かりのように、江戸時代に正午は九ツと呼ばれ、
一刻経つごとに八ツ、七ツ、六ツと下がっていったから、
「昼下がり」という呼称が生まれたということのようだ。
七ツだとすでに夕方なので、下がる最初の「八ツ」、つまり午後2時頃が「昼下がり」と言うことになる。
現代の時計を当時の夏至の日にはめてみると、正午は11時40分頃となり、昼八ツは、午後2時20分頃に相当する。
冬至で計算すると、正午は現代の11時40分頃。
昼八ツは、現代の13時30分頃ということになる。
オードリー・ヘップバーンの映画「昼下りの情事」
古い映画だがオードリー・ヘプバーン主演の「昼下りの情事」という有名な映画がある。
1957年に米国で作られたロマンティック・コメディ映画だ。
原題は、「Love in the Afternoon」で、直訳すれば「午後の愛」で、味気ない。
やはりこの作品は「昼下りの情事」という邦題が趣があってよい。
Micaelaミカエラ (YouTube)