日本語の漢字熟語の読み方は複雑です。
「発議」や「発会」をあなたはどう発音しますか。
「はつぎ」「はっかい」ですか。
それとも「ほつぎ」「ほっかい」ですか。
発議
「発議」を、あなたは何と読みますか。
筆者は「ほつぎ」と、かつて習いましたが、今は「はつぎ」が主流になってしまいました。
試しに「ほつぎ」とブラウザで検索してみてください。
「はつぎ」が主流になっていることが見て取れることでしょう。
はつ ぎ【発議】
( 名 ) スル
〔「ほつぎ」とも〕
① 意見を出すこと。 「吾之れを-せざるも猶ほ自から上京せんと企て居たりし也/欺かざるの記 独歩」
② 合議体で、議員が議案を提出すること。 「修正案を-する」
出典:『大辞林』(三省堂)
発会
これはまだ発を「ほつ」と読む人が残っていますが、
「発会」はほとんどの人が「はっかい」と読むようです。
これもブラウザで「発会」と検索してみると、「はっかい」がズラッと並びます。
はっ かい 【発会】
( 名 ) スル
① 会ができて、活動を始めること。また、会合を初めて開くこと。 「後援会が-する」 「 -式」
② 取引所で、その月の最初の立ち会い。一年の最初のものは大発会という。 ⇔ 納会
出典:『大辞林』(三省堂)
発足
「発足」は「はつ」が主流になって来ている感じがします。
ほっ そく 【発足】
( 名 ) スル
①
団体・組織などが新しく作られ,活動を始めること。はっそく。 「協議会は一〇月に-する」
②
出発すること。はっそく。 「静岡を-して/浮雲 四迷」
出典:『大辞林』(三省堂)
発起
「発起」は一般的にあまり使われないせいか、「ほっき」という読みが残っているようです。「はっき」という発音は聞きません。
ほっ‐き【発起/発企】
[名](スル)
1 思いたって事を始めること。「自分が―し、…村のために始めた道路愛護会の」〈島木健作・続生活の探求〉
2 仏語。㋐悟りを求める心を起こすこと。発心。㋑「倶舎論」などで、迷いが起こること。
3 あきらめること。我を折ること。「神様のお御意で―致した」〈浄・今宮の心中〉
出典:goo国語辞書
「発句」「発作」
以上の読み方は元来、発議=ほつぎ、発会=ほっかい、発足=ほっそく、と読んでいました。
ところが、いつの頃からか「はつ」でも良いことになり、今や「はつ」が主流となっています。
しかし発句や発作は今でも「ほっく」「ほっさ」と発音し、「はっく」や「はっさ」とは言いません。
ほっく【発句】
詩歌の初めの一句または俳諧の第一句が独立して一作品として作られたもの。俳句。
もともと「はつ」音の熟語
もともと「発」を「はつ」と発音し、今も変わらない熟語には次のようなものがあります。
- 発明
- 発車
- 発射
- 発揮
- 発達
- 発破
- 発狂
- 発熱
- 発毛
- 発育
- 発煙
- 発揚
- 発雷
- 発令
- 発露
- 発話
漢音と呉音の違い
漢字の読み方(発音)は、簡単に言うといつの時代に中国から伝わったかによって、漢音、唐音、呉音と呼ばれる発音があります。
「はつ」は漢音、「ほつ」は呉音とされています。
\漢音、唐音、呉音について詳細は/
不文律の読み方は、ふぶんりつ? ふもんりつ ? 呉音、漢音、唐音?[日本語の不思議]
「発」の場合、「はつ」音のほうが圧倒的に多いため、少数派の「ほつ」音は「はつ」音に取って代わられ、今や絶滅の危機に瀕しているといった感じです。
まとめ
「発」を「ほつ」と読む読み方(発音)は、呉音で、「発足」「発会」「発議」は「ほつ」音が正しかった。
かつては高校や大学の受験、就職の試験でも「はっそく」や「はつぎ」は不正解とされていた。
ところが、多くの人が間違った読み方をするうちに「はつ」音でも正しいことになった。
今ではどちらでも良いことになっている。
いや、むしろ「はつ」のほうが正しいとされる感さえも。