推理小説を対象にした米国の権威ある文学賞である「エドガー賞」にノミネートされた女性推理作家ダイアン・ファニング。
彼女は刑務所内の連続殺人犯と協力して、息子を殺したとされる母親の冤罪を晴らしたことでも知られる。
その経緯はフジテレビ系の『アンビリーバボー!』で放送されたが、
本記事は、ノンフィクション作家としても知られるダイアン・ファニングその人に焦点を当てて紹介する。
ダイアン・ファニングのプロフィールと生い立ち
ダイアン・ファニングはメリーランド州ボルチモアで生まれた。↑
プロフィール
出身地:米国メリーランド州ボルチモア
職業:ミステリー小説家、ノンフィクション作家
国籍:アメリカ合衆国
代表作:『Mommy’s Little Girl』『Written in Blood』『Throuh the Window』
その他:2006年「Written in Blood」がエドガー賞ノミネート
ファニングは米国メリーランド州ボルチモア(Baltimore, Maryland)に、ダイアン・リン・ブッチャー(Diane Lynn Butcher)として生まれました。
Butcherという姓は、意味が「肉屋、虐殺、人殺し」などの意味があります。
プロレスラーにいましたね、ブッチャーて。
恐ろしさを演出する名前ですね。
そのため、ダイアンが後に推理小説を書き始めた時、父方の親類はブッチャー姓を名乗ったほうが良いと思っていたとダイアンは自サイトに記しています。
ダイアン・ブッチャー著の殺人事件の本という洒落(しゃれ)ですね。
それはともかく、
ダイアンが6歳のとき、父親がボルチモア郡に建てた家に引っ越しましたが、その地でダイアンが生涯忘れられない、ある重要な事件が起こったのです。
9歳の時、生涯忘れられない事件を体験
9歳のとき、道路の丘の上に車を止めた車の男性がダイアンに道を尋ねました。
彼は車のドアを開け、ダイアンに地図を見るように言いました。
ダイアンが近づくと、彼は彼女の上腕をつかみ、ダイアンを彼の車に引き込もうとしました。
その時、丘の上に別の車が登ってきて、運転手が警笛を鳴らしました。
男はダイアンの腕を放し、車のドアを開けたまま車を出しました。
テレビで「ドラッグネット(DRAGNET)」の大ファンだったダイアンは、車のナンバーを覚えることを知っていました。
『DRAGNET』↓1950年代の米国の番組
それを母に伝え、警察に知らせたため、犯人は逮捕され、8歳の少女の性的暴行未遂と殺人未遂で有罪判決を受けました。
その事件によってダイアンは、犯罪者の心理に深く興味を持つようになりました。
広告業界の権威ある広告団体の賞を70回以上受賞
彼女はペリーホール高校(Perry Hall High School)を卒業し、その後バージニア州( Virginia)のリンチバーグ大学(Lynchburg College )で化学を専攻しました。
今風に言えば「リケジョ」だったわけです。
大学卒業後、彼女は広告分野で執筆し、アメリカ広告連盟(American Advertising Federation=AAF)という米国で最も古い広告業界団体が主催するAddy Awardを70回以上受賞しました。
ダイアンは、バージニア州のその地域に数年滞在し、ラジオ局、テレビ局、広告代理店向けに執筆しました。
同時に、雑誌記事と個人的なエッセイを書きました。
非営利団のナンバー3として10年働いた後執筆活動に
ファニングはテキサス州(Texas)のニューブラウンフェルズ(New Braunfels)に転居とともに、慈善寄付、ボランティア募集、その他の社会的目的を推進する州全体の非営利団体の連合の本部であるアナザーウェイテキサスシェア(Another Way Texas Shares、現在はCommunity Shares of Texas)のエグゼクティブディレクターを10年間務めました。
そこでは3番目の地位にありましたが辞任して、フルタイムで執筆し始めました。
テキサス州知事は、州従業員慈善キャンペーンのための州諮問委員会にダイアンを任命しました。
彼女はまた、全米寄付の選択協会(NACG)の理事会の執行委員会およびコミュニティシェアUSA(Community Shares-USA)の理事会にも参加しました。
NACGは、ダイアンとテキサス・アースシェア(Earth Share of Texas)のエグゼクティブディレクターであるマックス・ウッドゥフィン(Max Woodfin)に「自由の戦士賞(フリーダムファイターアワード)」を授与しました。
アナザーウェイ・テキサスシェア(Another Way Texas Shares)や、2002年4月にメリーランド州で当初設立された非営利組織である全米教育選択協会(National Association for Choice for Giving)を含む非営利団体の資金調達グループで働きました。
彼女はテキサスに住んでいる間に最初の本を書き始めました。
彼女は『Wall Street Journal』によって「読む価値のあるブログ」と評された「Women in Crime Ink」の共同創設者でもあります。
殺人事件のドキュメンタリー番組を見て違和感
たまたま見た殺人事件を扱ったドキュメンタリー番組の内容に、ダイアンはある種の違和感を覚えました。
作家としてさまざまな殺人事件を追いかけてきたダイアンには、証拠について納得できない点がいくつかあったのです。
その事件は、イリノイ州ローレンスビルの住宅、午前4時半に起きました。ジュリー・レイ・ハーパーは、10歳になる息子ジョエルと2人暮らしをしていたが、知らない男が家に入ってきて、息子のジョエルがいなくなりました。
すぐに警察が到着し、ジュリー宅の家宅捜索が行われました。すると、床に血のついたナイフが落ちており、寝室のベットの脇から、ジョエルの遺体が発見されたのでした。
ところが3年後、逮捕されたのは殺されたジョエルの母親ジュリーでした。
ジュリーは犯行を否認し続けたが、彼女には息子殺しの罪で懲役65年という判決が下されました。
ダイアンは事件の調査を開始しました。 調べれば調べるほど、違和感は大きくなりました。
70人を殺害といわれる連続殺人鬼トミー・リン・セルズ
そこで、ある人物に意見を聞いてみようと考えました。 その人物とは、本の執筆のため刑務所に出向き、20回の面会と手紙のやり取りを通して取材を重ねていた連続殺人犯、トミー・リン・セルズ(Tommy Lynn Sells)でした。
彼女はこの殺人鬼に意見を求めました。
しかし数週間後に届いた返信には、事件とは関係のない記述ばかりでした。ただ3行だけ気になる記述がありました。
「ひょっとして、その事件ってのは、オレが起こした事件の2日前の13日のことかい?」
セルズは、1997年の10月15日に彼が少女を絞殺した事件を起こしていました。ジュリーの息子ジョエルの死は、その2日前です。
ダイアンは、刑務所のセルズに会いに行きました。すると、セルズは5年前の事件について語り始めました。
動機はあまりに身勝手なものでした。
犯行の数日前、セルズは、偶然 買い物をするジョエルとジュリーに遭遇しました。 その時、自分に敬意のない態度をとったからというのです。
母子の後をつけて家を突き止め、数日後の深夜に家に押し入り、息子のジョエルを殺害したのでした。
ということは、投獄されている被害者の母ジュリーは冤罪です。でも、彼女を救うには裁判のやり直しが必要です。
セルズの犯行であるという裏付けを取るために、ダイアンはジュリーの弁護団と協力して本格的な調査を開始しました。
ジュリーの弁護団は、集めた証拠をもとに裁判のやり直しを請求し、有罪判決から4年後の2006年、再審が認められ、陪審員は無罪判決を出しました。
この事件でセルズは起訴されることなく2014年に処刑されました。
ダイアン・ファニングはトミー・リン・セルズとのやりとりを「Through the Window (St. Martin’s Press, 2003)」に著しています。
トミー・リン・セルス 1964年6月28日-2014年4月3日
アメリカの連続殺人犯。 1人の殺人で有罪判決を受け、死刑判決を受け、処刑された。 警察当局は彼が合計22人を殺害したとしている。彼は8歳の時、母親の了解のもと、Willis Clarkという男から性的虐待を受けたており、その虐待体験が後の犯罪に大きな影響を与え、トミーによれば犯罪によって「追体験」したのだという。
「無実の擁護者賞」受賞、エドガー賞ノミネート
ダイアンが現在住んでいるバージニア州のベドフォード↑
2011年、この功績によりファニングは、イリノイ・イノセンス・プロジェクトから「無実の擁護者賞」(Defenders of the Innocent Award)を授与されました。
2006年、彼女の著書 『血で書かれた(Written in Blood)』はエドガー賞にノミネートされました。
2004年、日本人の作家・桐野夏生が『OUT』でノミネートされ話題になったのが、エドガー賞です。
偉大な作家エドガー・アラン・ポーに因んで創設された賞です。
2009年11月にはCBSの「48時間の謎」、2010年と2011年には「ディスカバリー」で、ファニングのインタビューが放送されました。
CBSの「Crimesider」のコラムは、ケーシー・アンソニー事件について彼女が取り上げられました。
ダイアンはテキサス作家連盟の執行委員会とthe Heart of Texas chapter of Sisters in Crimeの委員を務めました。
ダイアンは「Mystery Writers of America」のメンバーでもあります。
多くの栄誉が与えられたダイアンですが、彼女はブログでこう語っています。
「しかし、犯罪作家としての私にとって最も充実したことは、不法に有罪判決を受けたジュリー・レア・ハーパーの冤罪を晴らすために私が果たした役割でした」
彼女は現在、夫と共にバージニア州ベドフォード( Bedford)に住んでいますが、それについてこう述べています。
「私は現在、世界最高の夫と一緒に、ブルーリッジ山脈の陰にあるバージニア州ベドフォードの町に住んでいます」
受賞歴
- 2001年:フリーダムファイター賞
- 2011年:「無実の擁護者賞」(Defenders of the Innocent Award)
フィクション作品
- Bite the Moon (Molly Mullet mystery; Five Star, 2007)
- Lucinda Pierce Mystery series (Severn House)
- The Trophy Exchange (2008)
- Punish the Deed (2009)
- Mistaken Identity (2010)
- Twisted Reason (2010)[12]
- False Front (2012)
- Wrong Turn (2013)
- Chain Reaction (2014)
- Libby Clark series (Severn House)
- Scandal in the Secret City (2014)
- Treason in the Secret City (2016
- Sabotage in the Secret City (2018)
ノンフィクション作品
- Red Boots & Attitude with Susie Kelly Flatau (Eakin Press, 2002)
- Through the Window (serial killer Tommy Lynn Sells, St. Martin’s Press, 2003)
- Into the Water (serial killer Richard Evonitz, St. Martin’s Press, 2004)
- Written in Blood (Kathleen Peterson murder, St. Martin’s Press, 2005)
- Baby Be Mine (Bobbie Jo Stinnett murder, St. Martin’s Press, 2006)
- Gone Forever (Susan McFarland murder, St. Martin’s Press, 2006)
- Under the Knife (Dean Faiello case, St. Martin’s Press, 2007)
- Out There (Lisa Nowak case, St. Martin’s Press, 2007)
- The Pastor’s Wife(Matthew Winkler murder, St. Martin’s Press, 2008)
- A Poisoned Passion (Wendi Mae Davidson case, St. Martin’s Press, 2009)
- Mommy’s Little Girl (Casey Anthony case, St. Martin’s Press, 2009)
- Her Deadly Web (Raynella Dossett Leath case, St. Martin’s Press, 2012)
- Sleep My Darlings (Schenecker double homicide, St. Martin’s Press, 2013)
- Bitter Remains (Laura Ackerson murder, Berkley Books, 2016)
- Death on the River (Angelika Graswald case, St Martin’s Press, 2019)
artin’s Press、2007)