秋の空といえば「女心」だと思っていたら、元は「男心」だったんだね。
「女心と秋の空」ってよく聞く言葉ですよね。
でも、「女心」と「秋の空」にどんな関係があるのか。
いつ頃から言われるようになったのか。
日本のオリジナルなのか、外国から入って来た諺(ことわざ)なのか。
分かっているようで意外と分かっていない言葉の真実—–。
飽きやすいのは男心か女心か
「女心と秋の空」という言葉がある。
女心と秋の空とは、変わりやすい秋の空模様のように、女性の気持ちは移り気だという意味で使われる。
秋(あき)は、飽(あき)にかかっているとも言われる。
男心と秋の空
「女心と秋の空」はよく耳にするが、「男心と秋の空」という言葉もあることをご存知だろうか。
「男心と秋の空」は主に女性に対する男性の愛情が変わりやすいことをいう。
が、歴史的には「男心」のほうが古いようだ。
「男心」が使われ始めたのは江戸時代なのに対し、「女心」は明治以降のようだ。
「男心」が女性への愛情が移ろいやすいことを意味するのに比べ、「女心」のほうは、男性への愛情に限らず感情の起伏が激しいことや移り気なことを意味する。
若い娘に対し、移り気な男性の愛情に気をつけるよう戒める言葉として使われたようだ。
江戸時代の俳人・小林一茶は、
はづかしや おれが心と 秋の空
という俳句を詠んでいる。文化13年(1816年)の句である。
小林 一茶(こばやし いっさ)宝暦13年5月5日(1763年6月15日) – 文政10年11月19日(1828年1月5日))。日本の俳人。本名は小林弥太郎。一茶とは俳号。
女心と冬の風
また、明治時代の尾崎紅葉の小説『三人妻』に「男心と秋の空」という表現が見られる。
これは「欧羅巴の諺に女心と冬日和といえり」と続く。
「女心と冬日和」は、イギリスの諺「A woman‘s mind and winter wind change often」を指したものと思われる。
変化しやすい冬の風を女心にたとえたもので、この頃から「男女」が逆転し始める。
その後、大正デモクラシーで女性の地位が向上したことで、女性が素直に意思表示できるようになるとともに、移り気な女性の心が秋の空にたとえられるようになっていったようだ。
日本ではなぜ秋の空なのか
では、英国では「冬の風」なのに日本では「秋の空」なのはなぜなのか。
英国の冬は、風が強くなったり弱くなったりと風が変化しやすいので、変わりやすい象徴として「冬の風」が使われた。
一方、日本で「秋の空」が移り気の象徴になったのは、次のような理由だ。
秋といえば「秋晴れ」や「小春日和(こはるびより※)」という表現が用いられるように、天高く澄み渡った清々しい空気が連想されるが、これは移動性高気圧がもたらすもの。
移動性高気圧が東に抜ければ、次は低気圧になる、つまり天気は崩れる。
秋は移動性高気圧がもたらす清々しい天気とその後の低気圧による雨天、さらには台風来襲と天気が変わりやすい。
つまり、移動性高気圧と低気圧が周期的に交互に通過することで、天気が変化しやすいわけで、そのことが「移ろいやすい心」を象徴するようになった、というわけ。
※小春日和:晩秋から初冬にかけての、暖かく穏やかな晴天
「女心と秋の空」「男心と秋の空」の類義語
類義語には次のような言葉がある。
女の心は猫の目
意味/女性の心理は、猫の目のように変化しやすいというたとえ
男心と秋の空は七度半(ななたびはん)変わる
意味/秋の空模様はたびたび変りやすい事から、心の変りやすい事のたとえ
まとめ
「女心と秋の空」は元々は「男心と秋の空」だった。
前者の「女心」は、全般的な移り気を指し、後者の「男心」は女性への愛情を指す。
英国では「女心と冬の風(A woman‘s mind and winter wind change often)」という。
「女心と秋の空」の英訳
- A woman’s mind and winter wind change often.(英国式)
- A woman’s mind is always mutable.(意訳)
類義語
- 女の心は猫の目
- 男心と秋の空は七度半変わる